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付録規範一覧 ── 本書が定めたこと

この一覧の読み方

本書の規範は全部で43項目、歯止めは8項目である。

規範は各章の本文に散らばって置かれている。書かれた場所は、その規範が効く場所であって、数えるための場所ではない。ここでは、それを章順に一列に並べる。

ここに並ぶ規範は、次の3つを満たすものだけである。

  1. 誰かに行為を課すか、何かに状態を求めている(「〜する/しない」「〜であること/〜が行われていること」)
  2. 守られているかを判定できる
  3. 破ると、本書の機構(検査・台帳・辿り)が成立しなくなる

章ごとの内訳

章規範歯止め何についての規範か
なぜ今このメソッドか00(規範はない。シフトレフトの扱いは本書の立場として本文にある)
Trusted Spec の定義10業務ルールに関する決定に残す3点
育て方サイクル総論20AIと人の線引き、辿る網の張り方
たたく ── 叩き台の執筆60流れと成果物のつながり、検査が手掛かりにする要素、関係する決定の読み方、AIの出力の扱い、参照が辿れる状態
深める ── 議論・決定・未決40議論と記録の順序、未決の残し方と書き方、棚卸し
ADRの扱い ── 決定を書く70起票の規律、ADRの要素、制約節の書き方(影響範囲と満たすべき状態)
ADRの扱い ── 台帳を守る31状態と属性、1決定1ADRと置換、成果物との整合
広げる ── シナリオを歩かせる50シミュレーションの規律、参照の照合と【広げる】を混ぜない
広げる ── レンズと歯止め57どのレンズにも共通する規律、【広げる】が見る範囲を足すときの書き方
確かめる ── ADR適合検査20当てる制約、AIの出力は3つの指摘だけ
変更管理 ── 変更要求が来たとき、サイクルをどう回すか40変更の1周(【深める】から入る)、全置換、前提が変わったとき、反映
テスト工程 ── 観点カバレッジとDDPモニタリング10試験観点と試験シナリオを考えるのは人
実装への接続 ── 「AIが実装できる仕様」を実装側から逆算する10上流の仕様が実装側に応えるべき3点
導入とプロジェクトハーネス ── 明日から小さく始める20発展の成立条件と、維持する責任者
ADR運用の重さ ── 何が大変で、どこに注意するか00(規範はない。運用の重さの見立てと、既に定めた規範の再掲)
合計438

規範の重心は、ADRの扱い(2章分)・【広げる】(2章分)・【確かめる】・変更管理にある。全43項目のうち26項目がこの6つの章に集まっている。育て方サイクル総論で見たとおり、本書が厚く書くのは後半の2ステップと記録である。


なぜ今このメソッドか

規範はない。シフトレフトの扱いは本書の立場として本文にある。

Trusted Spec の定義

規範宛先AI依存本文の位置
業務ルールに関してプロジェクトが下した決定は、「何を決めたか/なぜそう決めたか(WHY)/誰の判断か」の3点とともにADRに残す。3つ目を落とさない。書き手2章「②根拠がある」

育て方サイクル総論

規範宛先AI依存本文の位置
決めるのは、常に人である。AIが出してよいのは、【たたく】では叩き台、【深める】では論点の整理、【広げる】と【確かめる】では問いと指摘までとする。決定・合否・修正案は、AIに出させない。検査の実行●3章「1周のストーリー」
決定は、成果物を経由して次工程へ伝える。成果物は直前工程の成果物を参照し、他工程のADRを直接参照しない。書き手3章「工程をまたぐとき」

たたく ── 叩き台の執筆

規範宛先AI依存本文の位置
業務の理解(業務の定義)から、業務の流れ、システムの振る舞い(ユースケース・要求事項)、約束事(業務ルール・状態の定義)までが、成果物の上で一本の流れとしてつながっていること。書き手4章「何を書くのか」
成果物どうしがつながっていること。後ろの成果物から、何を受けて書いたのかを前の成果物へ辿れる。書き手4章「何を書くのか」
成果物は、検査の手掛かりになる要素を備える——IDとIDでの参照、業務の流れのタスクごとの主体・開始条件・事後条件、状態・業務ルール・例外の定義と、そこへのつながり、成果物の種別。欠けている要素があると、それを手掛かりにする検査は、そこだけ空振りする。書き手4章「検査のために、何を揃えておくか」
成果物は、自分が含まれる影響範囲と「横断」のADRの制約を満たし、つながっている上流の成果物と食い違わない。書き手4章「関係する決定を、どう読み、どう残すか」
AIの出力を、そのまま成果物にしない。書き手4章「AIに、どこまで書かせるか」
成果物どうしの参照が途切れていないこと。参照先が実在し、逆向きにも繋がっていて、同じものが同じ名前で呼ばれている。IDの体系(接頭辞・桁数・採番の区切り)は、プロジェクトの中で統一されている。書き手4章「参照が辿れる状態にしておく」

深める ── 議論・決定・未決

規範宛先AI依存本文の位置
順序は「議論 → 決定 → 記録」。記録は決定が下された後に書く。ADRには決定事項のみを記載し、確定前の論点は未決型ISSUEへ置く。書き手5章「決まったことを、どう残すか」
決まらなかったことは、未決型ISSUEとして残す。書き手5章「決まらなかったことを、どう残すか」
決まっていない箇所は、すべて次の2つを満たす形で書く——①未決だと読み取れること ②該当する未決型ISSUEへ辿れること。書き手5章「未決を、成果物にどう書くか」
工程・単位の節目で、未決型ISSUEの棚卸しが行われていること。棚卸しとは、開いている未決型ISSUEを一覧し、次へ持ち込むか・今決めるか・不要になったかを人が仕分けることである。プロジェクト5章「決まらなかったことを、持ち越す」

ADRの扱い ── 決定を書く

規範宛先AI依存本文の位置
ADRは、次の5つを持つ——何を決めたか/なぜそう決めたか/誰が確定したか/その結果(良い結果とトレードオフ)/この決定から生じる制約。書き手6章「ADRに何を書くか」
制約節は、1行に「影響範囲:満たすべき状態」を1組ずつ書く。書き手6章「制約節に何を書くか」
影響範囲は、決定を受け止める成果物(その決定を反映させる要件定義や外部設計の文書)の範囲を、プロジェクトの文書に実在する名前で書く。特定の範囲に絞れないときは「横断」と書き、空欄にしない。書き手6章「影響範囲をどう書くか」
影響範囲に書けるのは、そのADRを決めた工程の成果物だけである。工程をまたがない。書き手6章「影響範囲をどう書くか」
満たすべき状態は、その影響範囲の成果物を読めば、満たしているかどうかを人もAIも答えられる形で書く。書き手6章「満たすべき状態をどう書くか」
標準・ルールで既にカバーされている決定は、ADRに書かない。書き手6章「業務ルールのほかにも、残したい決定があるとき」
プロジェクト運営の決定(体制・スケジュール・会議体)を、ADRに混ぜない。次元が別であり、記録するとしても別台帳にする。書き手6章「業務ルールのほかにも、残したい決定があるとき」

ADRの扱い ── 台帳を守る

規範宛先AI依存本文の位置
台帳を保つために、ADRは次の状態と属性を持つ——状態・発生工程・発生箇所・確定者・置換リンク・前提とする決定。書き手7章「状態と属性を残す」
記録の単位は1決定1ADRとする。承認済みになったADRは書き換えない。変えるときは新ADRを起票して置き換え、元ADRのステータスを「廃止(新ADRにより置換)」にする。削除・追記もしない。番号は再利用しない。書き手7章「ADRの一生」
制約節に書いた影響範囲のうち、プロジェクトの文書に実在しないものは、すべて指摘する(「横断」は正しい値とする)。検査の実行7章「成果物との整合を保つ」

広げる ── シナリオを歩かせる

規範宛先AI依存本文の位置
AIが創作してよいのはシナリオ(=問い)だけである。答え・正解・修正案は書かない。検査の実行●8章「AIにシナリオを創作させる」
創作したシナリオには「AIによる仮説」と明記し、成果物からの引用と区別する。検査の実行●8章「AIにシナリオを創作させる」
ウォークスルーは実在の成果物を実際に読んで行い、参照した箇所を明示する。検査の実行●8章「AIにシナリオを創作させる」
シナリオの前提がAIの一般常識によるもので、実際の業務と違っているかもしれないことを、常に明記する。検査の実行●8章「AIにシナリオを創作させる」
参照の照合と、【広げる】(意味のペア照合・シミュレーション)を、一度にまとめて回さない。検査の実行8章「辿れる状態で回す」

広げる ── レンズと歯止め

規範宛先AI依存本文の位置
AIは答え(理由/責務/基準/例外の中身)を生成しない。「考えた跡があるか」を問い、跡が見当たらない箇所を人に手渡すだけ。検査の実行●9章「どのレンズでも、AIに守らせること」
「ない」と断定しない。言ってよいのは「確認した範囲では見当たらない」までとし、どの成果物を、どんな言葉で探したか(言い換え・略語・業務用語とシステム用語の対応を含む)を添える。検査の実行●9章「どのレンズでも、AIに守らせること」
1根本論点1指摘。同一根本原因と判定してよいのは、次の3条件をすべて満たすときに限る——(1) 対象箇所または業務上のつなぎ目が同じ (2) 不足・矛盾・曖昧さの根本原因が同じ (3) 一方を解消すると他方も同時に解消される。検査の実行9章「どのレンズでも、AIに守らせること」
指摘の行き先(未決型ISSUEにして議論する/成果物をそのまま直す/採らない)は人が振り分ける。AIは指定しない。検査の実行●9章「どのレンズでも、AIに守らせること」
【広げる】が見る範囲にプロジェクト固有・ドメイン固有のものを足すときも、「問い+歯止め」を1組にする。プロジェクト9章「レンズは、育てて使う」

確かめる ── ADR適合検査

規範宛先AI依存本文の位置
当てるのは、その成果物が含まれる影響範囲と「横断」を示す制約項目だけである。検査の実行10章「何を確かめるか」
AIの出力は、食い違っている/判断できない/どこにも書かれていない、の3つの指摘だけである。検査の実行●10章「何を確かめるか」

変更管理 ── 変更要求が来たとき、サイクルをどう回すか

規範宛先AI依存本文の位置
変更要求は未決型ISSUEとして受け、影響分析 → 合意・決定(ADR)→ 反映(反映型ISSUE)の順に回す。決定の前に、成果物本体を書き換えない。影響を見るための試し書き(分析用の試作)は、成果物本体に混ぜない。書き手11章「変更要求が来たら」
置換は全置換だけとする。小さな追加決定は、元のADRに追記せず、新しいADRとして並立して起票する。書き手11章「決めて、ADRに残す」
複数の決定が共有している前提は、前提そのものをADRとして起票する。前提のADRが置換されたら、それを前提としていたADRを1件ずつ人が見て、置換するか維持するかを決める。一括で自動的に置換しない。書き手11章「前提が変わったとき」
反映の作業は反映型ISSUEとして起票し、【確かめる】で指摘が出なくなったら、人が閉じる。書き手11章「成果物に入れる」

テスト工程 ── 観点カバレッジとDDPモニタリング

規範宛先AI依存本文の位置
試験観点と試験シナリオを考えるのは人である。AIに任せるのは、マトリクスの整備・突き合わせ・印のない交点の指摘といった作業の支援に限る。検査の実行●12章「テストの網羅を、どう示すか」

実装への接続 ── 「AIが実装できる仕様」を実装側から逆算する

規範宛先AI依存本文の位置
上流の仕様は、実装側に次の3点で応える——①実装から要求まで、IDで遡れること ②やってよい範囲・いけない範囲が、推測ではなく参照で解決できる形で書かれていること ③未決が未決と分かること(実装AIが「埋めてよい空白」と区別できること)。書き手13章「上流の仕様に求められること」

導入とプロジェクトハーネス ── 明日から小さく始める

規範宛先AI依存本文の位置
発展は、一般化したルールや観点が、守られていることを確かめる仕組み(検査やテストなど)に入ったときに成立する。一般化して移す先が決まらない決定は、発展させない(個別のADRのまま残す)。プロジェクト14章「発展させるときに守ること」
発展したルール・観点が、その仕組みで守られ続けているよう維持する責任者を定義する。発展したルールを改めることは決定であり、元のADRを置き換える新しいADRを起票する。プロジェクト14章「発展させるときに守ること」

ADR運用の重さ ── 何が大変で、どこに注意するか

規範はない。運用の重さの見立てと、既に定めた規範の再掲。

同章の「発展させたら、守られていることを確かめる仕組みに入れる」は、14章の規範の再掲である。ほかの工夫は、重さがどこに出るかの見立てから導いたもので、規範ではない。


歯止め一覧

歯止めは、検査で何を問わないかの線である。問いだけを置けば、検査は際限なく広がる。どこで止めるかを決めておくことが、検査を回せる量に保つ。全8項目。

章歯止め本文の位置
ADRの扱い ── 台帳を守る後の工程で出た決定の制約節が、前の工程の成果物を名指すことは、違反として弾かない。品質シグナルとして観測にとどめる。7章「前の工程の成果物を名指す決定」
広げる ── レンズと歯止めすべての要件には問わない。業務ルールに触れるものに限る。 成果物やその要素がIDでつながっているかは問わない。問うのは、つながっているものどうしが、中身として噛み合っているかである。9章「業務との整合」
広げる ── レンズと歯止め誰が担うかの特定と、処理の中身は問わない。問うのは、事後条件が次の開始条件と噛み合うかである。 知る手段や権限の中身は提案しない。 受け渡しがうまくいかないと業務が止まるもの、後から取り返せないものから、先に問う(例:出荷の指示、支払いの確定)。同じ担当者が続けて行い、その場でやり直せるもの(例:入力して、そのまま確認する)は、基本問わない。9章「境界・責任範囲」
広げる ── レンズと歯止め判断や確認をするタスクに限る。その中でも、判断を誤ったと後で分かったときに取り返せないものから問う(例:後のタスクがその判断を前提に進む承認や確定、お金や在庫を動かす判定)。取り返せるもの(例:下書きの保存、一覧の並べ替え)は、基本問わない。 取り返せない判断に限り、誰がいつ判断したかが、後から分かるかまで問う(例:与信の上限を超えた受注を、誰がいつ特別に承認したか)。どう残すか(形式・保存期間・手段)は問わない。 状態の名前が業務の言葉か、IDが振られているかは問わない(書き手が書いた直後に整える)。9章「検証可能性」
広げる ── レンズと歯止めあらゆる失敗は問わない。つなぎ目に集中する。定型の分岐(在庫あり/なし)と、単純なシステムエラー・入力エラーは問わない。 業務の流れへの関与が深い外部連携の失敗から厚く問い、流れから独立したものは基本問わない。 例外の中身は書かない。検討の跡があるかを問う。例外の一覧とのリンクの有無は問わない(書き手が参照として保つ)。9章「正常系偏重」
広げる ── レンズと歯止め1つの伝票の中(見出しと明細など)の更新は問わない。問うのは、別々の業務の情報(例:入金と売掛金、受注と在庫)をまとめて更新する場合である。 排他制御の実装手段(楽観排他・悲観排他)は問わない。後工程の領域である。9章「トランザクション境界」
広げる ── レンズと歯止め自機能の外で変わりうるデータに限る。確定・取り消せない操作の前提になるものから厚く問い、表示にだけ使うものは後にする。 整合性を保つ実装手段と、要件そのものの妥当性は問わない。9章「機能成立性」
広げる ── レンズと歯止め跡が残る操作に限る(確定、外部への送信、他者に見える状態変化、金銭・在庫の増減)。自機能の中で閉じ、誰にも影響を残さない操作は問わない。 業務判断としての例外、入力チェック、障害時の処理方式は問わない。リカバリ手順の中身は提案しない。9章「機能例外」
AI-Trusted Spec method 初版
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