第10章確かめる ── ADR適合検査
気づいて、議論して、決めた。では決めたことは、その後も守られているのか。この章は、成果物とADRを突き合わせる検算を扱います。いつ回すか、何を確かめるか、そして見落としへの備えを扱います。
【確かめる】とは、何をする検査か
決めたことが、その後も成果物で守られているかを確かめます。ADRの制約節と成果物を突き合わせ、決定に合っているかだけを見る、検算です。
いつ回すか
【確かめる】は、何かが変わったときに回します。きっかけは3つです。
- 決定が増えたとき。新しいADRが生まれたら、先に書かれた成果物がその決定と食い違っていないかを見ます。上流で全部決まるとは考えないので、決定が成果物より後に来るのは普通のことです。
- 変更要求が来たとき。変更後の成果物群が、既存の決定を守れているかを見ます。変更の影響を調べるときにも、この検査を使います。
- 成果物が書かれた・直されたとき。決定より後に書かれた成果物も、その決定を守れているかを見ます。
具体的に回す細かさは、プロジェクトの規模などに合わせて調整してください。工程の区切りなどの節目には、回しておくのがよいでしょう。
何を確かめるか
【確かめる】が見つけるのは、次の3つです。
- 成果物の記載が、決定と食い違っている。食い違っている記載をそのまま引いて指摘します。理由のない指摘は、人が確かめ直せないからです。
- 合っているか食い違っているか、判断できない。どちらかに決めつけず、判断できないとして人に返します。無理に決めさせると、AIが判断を代わってしまうからです。
- 書かれているべきことが、どこにも書かれていない。その範囲の成果物をまとめて見て、どこにもなければ指摘します。成果物がまだ1本もない場合も、同じように指摘します。1件ずつ見ると、どの成果物も「自分には関係ない」と答えて、書かれていないことが見えないからです。食い違いは成果物を1件ずつ見ますが、書かれているかどうかは、このようにまとめて見ます。
規範
AIの出力は、食い違っている/判断できない/どこにも書かれていない、の3つの指摘だけである。
ADRの制約節には、その決定が影響する成果物(影響範囲)が書かれています。そのため、成果物ごとに、影響するADRの制約だけを当てれば済み、全部のADRと全部の成果物を突き合わせる必要はありません。指摘は、制約節の1行ごとに出します。1本のADRに制約が3行あれば、3行それぞれについて見ます。
規範
当てるのは、その成果物が含まれる影響範囲と「横断」を示す制約項目だけである。
ADRの側に不備があるとき(制約節に影響範囲が書き漏れているなど)は、検査の側で補わず、ADRを直します。指摘を受けた後は、成果物を直すなら反映型ISSUEに、決定を見直すなら置き換えに載せます。成果物が業務の実態に合っているかどうかは、この検査の外で、発注者が読んで確かめます。入力と出力の実際の形は、付録の通し例にあります。
見落としに、どう備えるか
AIの検査で、すべての食い違いが見つかるとは限りません。指摘が出なかったことは、検査した範囲で食い違いが見つからなかったというだけで、見落としは残ります。見落としを運用で補う選択肢を挙げます。プロジェクトの規模や、成果物の重さに合わせて組み合わせてください。
- 抜き取りの人手確認:検査済みの箇所から抜き取って、人が見直す。
- 実行条件の固定:同じ入力・同じ条件で同じ結果が出るようにし、揺れを見えるようにする。
- 複数回実行の突き合わせ:揺れの差分から、不安定な判定を洗い出す。
- 検出実績の記録:何を見落としたかを残し、制約節の書き方やレンズへ返す。
- 節目の総ざらい:工程の区切りに、取りこぼしを拾う側に寄せた設定で全体を一度見る。
次章への橋渡し決めたことが守られているかは検算できます。では、その決定そのものが変わるときは?