ユースケース入門 - 成果編 -
成果編では、若手エンジニアの佐藤さんが、アプリケーションの修正を行い、完成させるまでのプロセスを紹介します。
ここでは、リーダーの高橋さんからの指摘をもとに修正することで、intra-martの機能についてさらに深く理解できるようになります。また、実際の業務で使用できそうなアプリケーションを完成させた経験を通して、ローコード開発の全体像を把握することができます。さらに、アプリケーションを「作って終わり」にせず、佐藤さんと一緒に改善点を確認し、より良いものにするための準備を進めていきましょう。
レビュー結果をもとに修正する
作成したアプリケーションは、第三者にレビューを依頼し、その結果をもとに修正します。今回、リーダーの高橋さんは、運用テストの観点でレビューを行いました。佐藤さんは、レビュー結果をもとに高橋さんからアドバイスを受けながら、作成したアプリケーションを修正していきました。
高橋さんからの指摘事項は複数ありましたが、その中でも気づきにくい点について3つ紹介します。それぞれ修正内容と対処方法について見ていきましょう。
[ 対処1 ] プロファイル画像の下にユーザ名を追加する
登録・編集・詳細画面では、ユーザの情報として画像のみが表示されていました。
プロファイル画像だけでは、誰が書いたコメントかわかりませんよね。画像の下にユーザ名を表示したらどうでしょう?
「自己紹介」テンプレートでは、右側にユーザ名が表示されていました。それをテキスト入力に置き換える際に、誤って削除してしまいました。もう一度、「自己紹介」テンプレートでアプリを作成し、そのエレメントをコピーしてきたほうが良いでしょうか?
誤って削除したときの対策として、バージョンを分けておくと復元しやすいというのがありますね。今回は設定が色々と大変になりそうなので、新しくエレメントを配置しましょう。ユーザ関連の情報は「共通マスタ」のエレメントを使用すると良いでしょう。
<修正内容>
登録・編集・詳細画面の「Refer Area」を開き、プロファイル画像の下にエレメントを追加します。ここでは、「共通マスタ」の「単一選択ユーザ検索」を使用します。このエレメントでは、ユーザコードを格納するselected
という変数を指定します。
「単一選択ユーザ検索」エレメントのプロパティ
通常「共通マスタ」の「単一選択ユーザ検索」エレメントは、ユーザの検索画面などに使用します。タスクボードアプリでは、ユーザの表示に利用しています。
【参考】IM-共通マスタ検索の実装例
「単一選択ユーザ検索」エレメントをユーザや会社組織を検索する機能を持つコンポーネントとして構築した場合の実装例を確認できます。タスクボードアプリの作成には直接関係しませんが、参考情報として知っておくことをおすすめします。
[ 対処2 ] 更新日時の表示形式を変更する
登録・編集・詳細画面では、更新日時が世界標準時間で表示されていました。
世界標準時間で表示すると見えにくいので、日時だけの表示にしましょうか。
「自己紹介」テンプレートでは日付と時間がきちんと表示されていたのですが、何か設定を間違えたのでしょうか?
いえいえ。おそらく「自己紹介」テンプレートでは、ロジックフローのタスクで世界標準時間を文字列に変換して、表示方法を変えているのかもしれません。ここは、「日付入力」エレメントに置き換えて、作り直しましょう。
<修正内容>
登録・編集・詳細画面や一覧画面に表示されている更新日時は、今回は使用しない【画面】アプリの「一覧参照処理」に関連するため、新たに設置します。エレメント一覧の「フォーム部品」から「水平フィールド」と「日付入力」を追加し、ラベルは多言語から設定します。
「日付入力」エレメントのプロパティ
日付入力ボックスを表示するエレメントです。タスクボードアプリでは、エレメントの値とタイムゾーンを指定しています。
【参考】アプリケーションの日付や時刻について
intra-martの日付や時刻の形式に関する動作仕様や考え方について確認できます。タスクボードアプリの作成には直接関係しませんが、参考情報として知っておくことをおすすめします。
[ 対処3 ] ステータスに合わせてタスクの色を変更する
一覧画面では、タスクの枠がデフォルトの灰色で表示されていました。
ステータスをカードに表示しているので、さらにカードの枠の色をステータスごとに色分けされていると、優先順位が見やすくなりそうですね。
「自己紹介」テンプレートではカードが色分けされていたので、そこで使用していた定数やアクションが使えそうでしょうか?
カラーコードを活かすことはできそうですが、ステータスと色の判定部分を新たに設定する必要がありますね。「自己紹介」テンプレートでは、色のデータをデータベースで保持していましたが、今回はステータスと色を紐づけてみましょう。
<修正内容>
「自己紹介」テンプレートでは、定数にカラーコードが指定され、画面上で選択した色を表示するために、データベースに保存し永続化を行っていました。今回は、「画面上で選択されたステータス」や「取得したデータのステータス」に応じて背景色が変わるようにするため、「背景色」を変数として設定し、ステータスに合わせて色が変更されるカスタムスクリプトを作成しました。
カスタムスクリプトの使用方法
カスタムスクリプトでは、IM-BloomMaker独自の記法を使用します。カスタムスクリプトの使用方法と使用例についても確認しておきましょう。
修正が終わりました。さらに使いやすくなったと思います。流用したテンプレートの設定内容をよく理解していないと、気づけないことがたくさんありますね。
そうですね。カスタマイズする前の状態で仮のアプリを別のカテゴリに作成しておき、比較しながら進めていくのも良いかもしれませんね。
完成したアプリケーションを公開する
他のメンバーもタスクボードアプリを使用できるように、公開に必要な設定について紹介します。 Accel Studioのアプリケーション管理画面で「メニュー」と「認可」の設定を行いましょう。
ポータルサイトのメニューに表示する
作成したアプリケーションをポータルサイトのメニューに表示します。
作成したアプリケーションをメニューに表示する
「テナント管理」画面から、ポータルサイトのメニューに表示するために、メニューグループの追加と権限設定を行います。「Accel Studio管理者」ロールを付与されていれば、Accel Studioのアプリケーション管理画面の「権限設定」から「メニュー設定」画面を表示できます。
アプリケーションの認可を変更する
作成したアプリケーションの権限を変更し、他のメンバーも使用できるようにします。
アプリケーションにアクセスできるユーザを追加する
「Accel Studio管理者」ロールを付与されていれば、Accel Studioのアプリケーション管理画面の「権限設定」から「認可設定」画面を表示できます。
アプリをポータルサイトに公開しました。メニューからアクセスできます。アプリを開いて、一通り操作してみましたが、問題なさそうです。
そうですか。ご確認いただきありがとうございます。それでは、来週のミーティングでメンバーに周知して、次のプロジェクトから早速使っていきましょう。気づいた点があれば、佐藤さんに連絡するように伝えますね。
はい!まだまだ改善点はたくさんあると思っていますので、指摘内容をまとめておきます。
今後の改善に向けた準備
アプリケーションは「公開したら、それで終わり」という訳ではありません。アプリケーションを運用しながら、メンテナンスも進めていくというフェーズに入ります。佐藤さんは、リーダーの高橋さんからの指摘なども含めて、今後タスクボードに追加したい機能をいくつかピックアップしていました。時間の都合上、今回は対応できませんでしたが、プロジェクトが落ち着いたらアプリケーションを修正したいと考えています。
今後の改善に向けた準備は2つあります。それぞれの内容について見ていきましょう。
アプリケーションのバージョンを管理する
IM-LogicDesignerとIM-BloomMakerでそれぞれバージョンを確認した後、Accel Studioのアーカイブ機能により、アプリケーションの情報を内部に保持します。修正後に不具合が発生した場合、前のバージョンに戻すことができるように準備しておきましょう。
バージョンを管理する
Accel Studioのアーカイブ機能以外にも、Git連携によりバージョンを管理する方法があります。開発環境に合わせて、バージョン管理の方法を決めておきましょう。
アプリケーションを別の目的で使用する
佐藤さんは、タスクボードアプリをテンプレート化し、「改善管理アプリ」という名称で、自分専用のアプリケーションを作成することにしました。ここには、タスクボードアプリで改善したい内容をメモしていく予定です。現時点で、取り入れたかった機能をいくつか入力しました。
- 一覧画面でステータスごとに縦表示にしたい
- タスクボードだけではなく、一覧表示もしたい
- 他の人からのコメント機能を追加したい
また、この自分専用のアプリケーションを使って、今後いろいろな設定を試してみたり、新しく機能を追加してみたりなど、検証のために使用していきたいと考えています。
テンプレートを作成する
Accel Studioでは、ユーザが作成したアプリケーションをもとにテンプレートを作成できます。テンプレートに含まれる定義情報についても確認しておきましょう。
これで、今後の改善に向けた準備ができました。自分用に作ったアプリを使って、空いている時間でもっとカスタマイズもしていければと考えています。
試行錯誤しながらも、よく一人でここまで作成しましたね。intra-martにはたくさんの機能があるので、いろいろ試してみると習得が早くなりますよ。プロジェクトが終わったら、メンバーの意見をまとめていきながら、タスクボードアプリを改善していきましょう。
まとめ
新規アプリケーションの開発は、機能や目的によって進め方が異なり、さらにどこでエラーが出るかによって対処も異なるため、いつも同じ手順という訳にはいきません。また、プロジェクトの規模や関わるメンバーの数、スキルセットによっても異なり、調整や変更が必要となります。それでも、基本的な大まかなプロセスについては共通する部分があり、一連の流れを押さえることで、ローコード開発の全貌が見えてきます。
タスクボードアプリの作成では、intra-mart初心者の佐藤さんが試行錯誤しながら実際に取り組んだ様子をお伝えしてきました。佐藤さんは学習した内容を活かし、テンプレートの活用やアプリケーションの仕様を決め、開発から公開に至るまで、実践を通してローコード開発の要点を掴んでいきました。
次回のユースケースでは、実際のプロジェクトを通して、どのようなプロセスで開発を進めていくかについて具体的に紹介する予定です。より実践的な内容をお届けしますので、ぜひご期待ください。