ローコードによる「開発」とは? スムーズな進め方を解説
この記事でわかること
- ローコードの開発で行うこと
- 複数人でローコード開発を進めるポイント
- intra-martのローコード開発でスムーズに進める方法
開発では、設計で検討した内容に基づき、機能を実装していきます。従来のシステム開発ではプログラミング作業を中心に構築していきますが、ローコード開発では、GUI(Graphical User Interface:グラフィカルユーザインタフェース)上で機能をドラッグ&ドロップしながら構築していきます。GUIの利用により、コードの記述量が最小限に抑えられるため、視覚的に理解しやすく、簡単な操作でシステムやアプリケーションなどを開発できます。
この記事では、ローコードによる開発について理解し、intra-martの機能やツールを最大限に活用しながら、スムーズに進める方法について解説していきます。
- 1. ローコードの開発では何をするの?
- 1.1. プロトタイプの共有部品による実装
- 1.2. 開発中の単体テストとデバッグの実施
- 1.3. 詳細設計書の作成とレビュー
- 2. 複数人でローコード開発を進めるポイント
- 2.1. 開発規約・開発方針を策定する
- 2.1.1. 開発方針
- 2.1.2. 開発規約
- 2.2. テンプレートを共有する
- 2.3. バージョンを管理する
- 2.4. 排他制御を利用する
- 3. intra-martで始める開発の流れ
- 3.1. Step. 1 開発を始める前に、開発の標準化を考える
- 3.2. Step. 2 データベースの詳細設計、開発を進める
- 3.3. Step. 3 ビジネスロジックの詳細設計、開発を進める
- 3.4. Step. 4 画面コンテンツの詳細設計、開発を進める
- 3.5. Step. 5 詳細設計書の作成とレビュー
- 4. まとめ
ローコードの開発では何をするの?
ローコード開発ツールを使用し、要件定義で作成した基本プロトタイプをもとに詳細な設計を進めることで、ある程度作りたいアプリケーションの形が見えてきます。そうすると、次の開発工程では何をすれば良いのかと疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。開発工程の進め方次第では、開発期間やコストに大きく影響を与える可能性があります。ローコード開発のメリットを最大限に活かし、スムーズに開発を進めるためにも、作業の概要と流れについて押さえておきましょう。
プロトタイプの共有部品による実装
ローコードの開発では、設計で作成したプロトタイプの共有部品を組み合わせて、実装作業を進めていきます。この方法は従来のシステム開発とは異なり、プログラミングがほとんど必要ないため、コードの記述ミスによる不具合(バグ)を防ぐことができます。コードの記述ミスが発生すると、バグを取り除くため、デバッグ作業にかなりの時間が掛かってしまいます。共有部品を活用することで、コードの記述ミスやバグのリスクを大幅に軽減でき、開発期間の短縮につながります。
開発中の単体テストとデバッグの実施
ローコードによる開発でも、従来のシステム開発と同様に、開発中に単体テストやデバッグを行います。単体テストでは、開発者本人がモジュールやコンポーネントといった機能単位の動作について、内部設計で検討した内容を満たしているかどうかを確認します。
単体テストとは?
単体テストの概要(仕組み、種類、観点など)について、詳しく解説しています。単体テストを開発中に実施することで、早い段階でバグを発見し、すぐに修正できるというメリットがあります。単体テストの実施方法と注意点も併せて確認しておきましょう。
単体テストを行い、バグを見つけた場合、各ローコード開発ツールのデバッグ機能を使用して、画面の変数やアクション、ビジネスロジックの処理に対してデバッグを実施します。デバッグ機能により、バグの原因を特定しやすくなるため、すぐに改修を行い、次の工程に進めることができます。
ビジネスロジックに対するデバッグ
IM-LogicDesignerでは、ビジネスロジックを作成した後、すぐに処理に対するデバッグを実行できます。データの値を指定して処理を実行したり、ブレイクポイントを設定して処理の過程を確認したりすることができます。
画面の変数やアクションに対するデバッグ
IM-BloomMakerでは、画面で変数やアクションを設定した後、プレビュー画面からすぐにデバッグを実行できます。デバッグを実行するためには、お使いのGoogle Chromeに拡張機能をインストールする必要があります。変数の値を指定しながら処理を実行したり、ブレイクポイントを設定して処理の過程を確認したりすることができます。
詳細設計書の作成とレビュー
実装作業が一通り終了した後は、詳細設計書を作成します。詳細設計書は、システムの構造や処理の流れを整理するために作成します。詳細設計書が不明確であると、テスト工程や運用・保守工程で不具合や遅延が発生する可能性があるため、従来のシステム開発と同様にローコードの開発でも作成することをおすすめしています。
詳細設計書を作成する際には、実装した機能や処理の詳細な仕様や関連する情報を記述します。これにより、開発者や関係者がシステムの動作や構造を理解しやすくなり、開発の進行や品質管理を効果的に行うことができます。
具体的なプロセスとしては、実装した機能や処理を実際にテストします。問題がなければ、画面・帳票やプログラム処理などの詳細定義書を作成していきます。詳細設計書を作成した後、ユースケースシナリオを想定しながら、設計内容の整合性、抜け・漏れを確認するためにレビューを行います。このように、詳細設計書の作成とレビューを行うことで、システムの品質や正確性を確保しながら、この後のテスト工程や運用・保守工程にスムーズに移行できます。
複数人でローコード開発を進めるポイント
プロジェクトの規模が大きくなると、複数の開発者で協力して一つのアプリケーションを開発する必要が出てきます。特に、ローコード開発では、プログラミングのスキルによって、開発メンバー間でさまざまな工程を分業するということが一般的です。そのような場合、開発メンバー間でどのように情報を共有していくか、開発スピードを落とさずに品質を維持していくかを考えることが重要となります。
ここでは、複数人でローコード開発を進める際のポイントについて紹介します。複数人での開発を効率的に進め、不要なトラブルの発生を避けるためにも、ポイントをしっかり押さえておきましょう。
開発規約・開発方針を策定する
複数人で開発を進めるためには、システム開発全体の共通事項として、開発規約や開発方針を策定します。ローコード開発でも、従来のシステム開発と同じように、プラットフォーム側で用意しているツールや機能の利用を想定しながら、開発規約や開発方針を検討していきます。
開発方針
開発方針では、プロジェクトの方向性や取り組みを示すガイドラインをまとめます。たとえば、開発方針には、以下のような内容を記載します。
- 開発目標
- 開発手法
- 品質管理
- コミュニケーション
- 変更・リスク管理
- 成果物の管理・レビュー
開発のメンバー間で共有した開発方針にしたがって、一定の品質を確保しながら、リスクを最小限に抑え、スムーズに開発を進めることができます。特に、ローコード開発では、品質管理や変更・リスク管理として、バージョン管理の方針、成果物の共有、テンプレートの共有といった方針を検討しておくと良いでしょう。
開発規約
開発規約では、プロジェクトの進行や成果物の品質を確報するためのルールやガイドラインをまとめます。たとえば、開発規約には、以下のような内容を記載します。
- 役割と責任
- 開発プロセス
- 命名規約
- コーディング規約
- テンプレート共有
- バージョン管理
- 単体テスト手法
開発のメンバー間で共有した開発規約にしたがって、作業の一貫性を確保しながら、品質を向上させ、効率的に開発を進めることができます。ローコード開発では、特に変数や定数といった命名規約を共有することで、ツール間のデータのやり取りがスムーズにできます。また、テンプレートの共有についてもルールをまとめておくと良いでしょう。その他にも、プログラミングが必要な箇所については、コーディング規約を用意します。
テンプレートを共有する
上記の開発規約でも検討要素の一つとして紹介しましたが、テンプレートの共有により、開発のメンバー間で、統一感のある画面のデザインや一貫性のある処理のフローなどを維持しながら、開発を進めていくことができます。設計で作成したプロトタイプの共有部品は、それぞれ画面コンテンツ、画面のエレメント・変数・アクション、ビジネスロジックなど、用途別にパーツ化されているため、実装方法については開発規約で策定します。
また、開発者が作成したアプリケーションは、それ自体をテンプレートとして共有することができます。複数のアプリケーションを開発するプロジェクトでは、アプリケーションの統一化を図ることができ、開発期間の短縮につながります。テンプレートには、すでに各種テストとデバッグを行い、問題がないと判断されたアプリケーションを使用すると良いでしょう。
アプリケーションのひな型を作成したい
Accel Studioでは、標準機能として提供しているテンプレートと、Accel Studioで作成したアプリケーションをもとにユーザが独自に作成できるテンプレートをそれぞれ用意しています。同じ方針で別のアプリケーションを開発する場合、ユーザが作成したテンプレートをひな型として使用できます。
バージョンを管理する
複数人で作業を行う場合、同じファイルにそれぞれ変更を加えたり、別のファイルを誤って上書き保存してしまったりすることを想定して、あらかじめバージョン管理について考慮しておきましょう。バージョン管理では、ファイルの作成・更新者、ファイルの作成・更新日時、ファイルの変更履歴などの情報を記録します。ローコード開発では、画面コンテンツやビジネスロジックだけではなく、アプリケーションも含めて、それぞれのバージョンを管理できる機能を用意しています。
また、差分表示機能により、変更前と変更後の差分を比較し、変更内容や問題点を確認した上で、任意の状態まで戻すといった判断ができます。上記の開発規約でも検討要素の一つであるため、不要なトラブルを避けるためにも、バージョン管理機能についてきちんと設定しておきましょう。
開発でバージョン管理機能を活用する
バージョン管理機能は、アプリケーションの運用・保守だけではなく、開発でも活用できます。開発中と公開後の各バージョン管理については、環境の違いや管理対象の範囲などを考慮し、それぞれ方針を決めることをおすすめします。
Git連携で効率良く作業を進める
Accel Studioで作成したアプリケーションは、Gitホスティングサービスのリモートリポジトリにアップロードすることで、開発中のローコード資材をまとめて管理できます。開発環境にGitHubを導入している場合は、バージョン管理とバックアップの方法としてGit連携機能を使用することも検討してみましょう。
排他制御を利用する
上記で紹介したバージョン管理機能や差分表示機能で、誤って変更されてしまったファイルを任意の状態まで戻すといった対処方法以外にも、あらかじめファイルを上書き保存されないように、排他制御機能を設定しておく方法があります。上記の開発方針にある変更・リスク管理では、排他制御機能を有効にするタイミングについて定め、成果物のレビュー時など、第三者による修正が入る場合は機能を無効にするといった対応を決めておくと良いでしょう。
画面コンテンツの意図しない上書きを防ぐ
複数人で同じデザイナ画面にアクセスしている場合、IM-BloomMakerの排他制御機能を有効にすることで、設定したユーザだけが画面コンテンツを編集できる状態に変わります。排他制御機能を無効にすると、他のユーザが開いているデザイナ画面は自動で更新されないため、ブラウザをリロードする必要があります。排他制御機能の詳細について、ユーザ操作ガイドで確認しておきましょう。
ロジックフロー定義の意図しない上書きを防ぐ
複数人で同じロジックフロー定義画面にアクセスしている場合、IM-LogicDesignerの排他制御機能を有効にすることで、設定したユーザだけがロジックフローを編集できる状態に変わります。排他制御機能を無効にすると、他のユーザが開いているロジックフロー定義画面は自動で更新されないため、ブラウザをリロードする必要があります。排他制御機能の詳細について、ユーザ操作ガイドで確認しておきましょう。
intra-martで始める開発の流れ
ここからは、実際にintra-martのツールや機能を使って、開発を進める方法について解説していきます。開発では、設計で検討した項目をもとに、さらに詳細設計が必要な項目について検討を行い、単体テストやデバッグの実施により、実装を進めていきます。開発の各工程で、intra-martのツールや機能をどのように活用できるのかについて見ていきましょう。
Step. 1 開発を始める前に、開発の標準化を考える
開発作業を効率的に進めるために、開発の標準化に焦点を当てて、開発標準を策定していきます。開発標準とは、開発全体の標準化を進めるための一般的な指針であり、開発プロセス、コーディング規約、命名規約、ドキュメント作成方法、テスト標準方法などが含まれます。この開発標準をもとに、プロジェクトの開発方針や開発規約を検討していきます。開発標準は開発担当者だけではなく、運用・保守担当者にも共有するため、一般的な指針に準拠しながら作成すると良いでしょう。
Step. 2 データベースの詳細設計、開発を進める
データ設計で検討した内容をもとに、物理的な構成といった側面に焦点を当てて、データベースの詳細設計、開発を進めていきます。intra-martでは、各ツールでデータのやり取りを行う際に、アプリケーションで利用するデータの定義を設定します。ここで設定した定義をもとに、データベースのテーブル・画面・処理が作成されます。また、データベースの命名規約を作成すると、データベースの構造の可読性や一貫性が向上します。
エンティティの操作ログを設定する
IM-Repositoryでは、データレポジトリ機能を利用して、エンティティデータの取得・検索・登録などを行います。ローコード開発ツールで作成したアプリケーションのデータは、IM-Repositoryを使って統合的に管理できます。開発時からエンティティの操作ログを設定することで、トラブルシューティングだけではなく、セキュリティの強化や監査といった運用・保守の側面でも有効です。
Step. 3 ビジネスロジックの詳細設計、開発を進める
設計で作成した詳細プロトタイプを使用して、ビジネスロジックの詳細設計を進めていきます。intra-martの各ツールとの機能連携や外部システムとの連携などの有無を確認し、複雑な処理についてはユーザ定義タスクを作成します。ビジネスロジックの実装が一通り終了した後は、単体テストとデバッグを行い、バグを解消していきます。
ロジックフローの実行ログを設定する
IM-LogicDesignerで単体テストとデバッグを行う前に、実行ログを設定しておきます。実行ログは、ロジックフローとユーザ定義タスクでそれぞれ設定が必要となります。実行ログはデバッグ時に役立つだけではなく、アプリケーションの動作を理解しやすくなるため、運用・保守時にも有効です。
Step. 4 画面コンテンツの詳細設計、開発を進める
設計で作成した詳細プロトタイプを使用して、画面コンテンツの詳細設計を進めていきます。intra-martの各ツールとの機能連携や外部システムとの連携などの有無を確認し、バリデーションチェックによりデータの妥当性を検証していきます。画面コンテンツの実装が一通り終了した後は、単体テストとデバッグを行い、バグを解消していきます。
画面コンテンツのログ出力を設定する
IM-BloomMakerで単体テストとデバッグを行う前に、ログ出力について設定しておきます。画面コンテンツに無効化されたエレメントやアクションが含まれている場合、コンソールにログ(エラーメッセージ)を出力します。また、無効化したエレメントやアクションを誤って使用しないように実装することもできます。
Step. 5 詳細設計書の作成とレビュー
開発が一通り完了した後、設計内容との整合性を図るため、詳細設計書を作成します。実装段階まで進んだロジックフローや画面コンテンツについては、intra-martの各ツールから詳細設計書として出力できます。その他の詳細設計書を含め、ドキュメント全体で整合性が取れているかという観点で見直していきます。
各設計書の作成が終わった後、ユースケースシナリオと照らし合わせて、設計内容との整合性や抜け・漏れがないことを確認するためにレビューを実施します。
アプリケーションの設計書を出力する
ロジックフローと画面コンテンツの設計書の出力方法について確認しておきましょう。
まとめ
ローコードの開発を実際にどのように進めれば良いのかと疑問に思っていた方も多いのではないでしょうか? ローコードの開発では、設計で準備してきた共有部品やテンプレートを組み合わせて、一気にアプリケーションを完成形まで仕上げていきます。プロジェクトの規模や開発体制によっては、アプリケーションを完成させるまで、複数人で同時に作業を進めていくことも考えられます。ローコード開発ツールの特性を活かしながら、効率的に共同作業を進め、アプリケーションをスムーズに構築していくことが今後ますます求められるでしょう。
ローコード開発ガイドでは、要件定義から保守・運用までの各工程において、intra-martのローコード開発ツールの効果的な活用方法について解説しています。今回は、ローコード開発の流れや複数人でローコード開発を進めるポイントについて紹介しました。
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